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早稲田大学国際情報通信研究科 / 早稲田大学基幹理工学部表現工学科・長 幾朗 研究室

メディアデザインの未来

 21世紀の今日、前世紀のポストモダニズムや脱構成主義に攪乱された時代から、ふたたび自然主義的な傾向へと向かい始めています。近年、タンジビリティやハプティックなどのいわゆる人間の感性や情緒を基にした表現が提唱されていますが、これらの根源には枯渇する地球資源や爆発しつつある人口増加、あるいは都市への過度の集中などの問題や、自然との共生する事に関心が移りつつある証かもしれません。エコロジーの概念や問題提起は、先進国の利益保護や既得権の占有に意図があると非難する声もあります。けれども、一方ではフードコストや様々な生産コストの課題など、バブルの時代の余剰や無駄の削減が解決すべき課題としても取り上げられ、必ずしも否定されるものではないでしょう。そして、今日ではこれらをさらに明らかな形とするための新たなデザインが求められています。私たちは、次代のデザインについて様々な提案を試みています。

 早稲田大学国際情報通信研究科、および基幹理工学部表現工学科の長幾朗研究室は、今日の社会との連係や持続可能な、いわゆるサスティナブルな環境やそのデザインを研究課題のひとつとしています。遠く離れた地にいる母親を見守るシステム、言葉では言い表せない人と人の繋がりを示す方法、ごくありふれた机に表示される遠い地との会議や共同作業、人や物のシルエットが導くインターネットの世界や仕事についてのガイダンス、伝統工芸などの技術をやさしく理解・体験できるデジタルアーカイブ、生活の知恵や経験を生かしたインタフェースデザイン等々。これらの提案の多くは、無駄なエネルギーや操作を必要としない低コストの環境であり、また人と人、そして社会や都市、そして地域の繋がりを感じさせるデザインです。日本に留まらず、韓国・台湾・中国・欧米などから集まった学生たちは、それぞれのセンスや概念の違いを超えて協同する事、さらには共生可能な社会とは何かを実現しようとしています。まだまだ学生としての稚拙な表現も見受けられますが、若い感性ならではの試みを是非ご高覧下さい。