Prof. Pin-Chung Lin

ASIAN ART & DESIGN NOW 2008

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講師紹介 Speakers Profile

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Pin-Chung Lin 林 品章
Professor , Department of Industrial and Commercial Design, National Taiwan University of Science and Technology, Taiwan
台湾・台湾科技大学工商業設計系 教授、学科長
 
Dr. Pin-Chang Lin earned a Master degree of Tsukuba University in 1984, and earned a Ph.D. degree of Chiba University in 2001.  In 2000 he was elected to be the dean of design college of Chun Yuan Christian University, After 4 years he returned to National Taiwan University of Science and Technology.  In 2005 he was elected to be the president of Taiwan Society of Basic Design and Art.  He had published about 8 books in Basic Design, Typography and Visual Communication Design, he also had lots of academic paper published in journal.  He earned 5 research awards of National Science Council of Taiwan.  Now his research is focus on Taiwanese Design History, Non-verbal Communication System and Design Methodology.


日本統治時代の台湾のデザインと社会

はじめに
 台湾(中華民国)は、太平洋の西側に位置し、太平洋からインド洋、大西洋へと往来する航海上の要所にあたる。十六世紀以降に航海術が発達した事らより、台湾の地理的な重要性が次第に増し、台湾はスペインとオランダ、明鄭氏、清朝、さらには後に日本により統治された歴史的な過程を辿った。日本統治時代には、日本植民政府は政治宣伝、および経済貿易の活性化を促すため、様々な大規模の行事を催した。これらからも、当時のデザイン発展の状況が明らかとなる。

日本統治時代の社会とデザイン
 1895年、日本は日中下関条約によって、台湾を植民地として統治した。日本植民政府は、その初期には「農業の台湾、工業の日本」の政策を掲げて、台湾の労働力や資源を取り込む事によって本国の工業発展を企てた。また一方、「六三」法案を採択し、台湾人民を統治する際の法律とした。統治末期には、また台湾を「内地」の延長とするべき、「皇民化政策」を行った。
 日本が統治した時期、多くの不平等な政策があったが、都市計画、水道・電気の敷設、交通設備等の建設も行われた。他にも植民政策により台湾西部で実施された精密な土地測量により、課税すべき土地区画を詳細に把握したのみならず、この記録は戦後の台湾の地籍資料の基礎となった。また日本を介して、大量の西洋の文化もこの時期にもたらされた。統治時代には、台湾各地で様々な共進会(品評会)や博覧会が開催されたが、これらは台湾の経済においても反映をもたらすものであった。これらの展覧活動は、日本植民政府が台湾で実施した経済・建築・教育・文化等の成果を顕示する事であったが、同時に各展覧会の広告宣伝や各種のデザイン活動が、当時のデザインに対する認識を高める役割も果たし、また当時の貴重なデザイン発展史ともなっている。
 これらの共進会や博覧会は、年代順には台湾勧業共進会(1916)、始政三十周年紀念展覧会(1925)、中部台湾共進会(1926)、高雄港勢展覧会(1931)、商業美術展覧会(1932)、始政四十周年紀念台湾展覧会(1935)等であるが、特に始政四十周年紀念台湾展覧会は大きく、台湾有史以来、唯一の国際的な博覧会であった。これらのそれぞれの催しでは、新聞・航空機・自動車・ポスター・看板・はがき・ガイドブック・広告塔等々で様々な宣伝活動が行われ、また花火・音楽演奏・福引き券の発行・仮装行列・野球試合等々の多くの娯楽的な活動も併せて開催された。またこれらの行事の展示デザイン・ショーウィンドウ・ディスプレィ・コンテスト・広告隊パレード等もあり、当時の台湾の一般的なデザイン表現が反映されていた。

おわりに
 歴史研究においては、事実を明らかにする事がまず求められる。そして、その歴史的事実から我々は何を読み取るかも重要である。前述の展覧会等は、日本植民政府の政治経済活動の顕示に留まらず、台湾の文化と教育、そしてデザインを大きく向上させる契機ともなった事が認められる。