Prof. Kazuhiko Yamazaki

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講師紹介 Speakers Profile

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Kazuhiko Yamazaki 山崎 和彦
Professor, Department of Design, Chiba Institute of Technology, Japan
千葉工業大学工学部デザイン科学科 教授
 
京都工繊大卒業後,クリナップ(株)デザイン室を経て,日本IBM(株)デザイン部門に所属。ThinkPad,情報機器やシステムのデザインを担当。携帯,オフィス機器,住設,カフェ等のデザインコンサルティングも担当。グッドデザイン賞,iF賞,レッドドット賞,IDSA賞など受賞多数。東大博士課程満期退学,博士(芸術工学), 人間中心設計機構副理事長。日本IBMデザインセンター長を経て,2007年より現職。


Design Innovation for the Future
未来のためのデザインイノベーション

はじめに
 近年,企業や製品開発などに「イノベーション」が求められている。イノベーションとは「あたらしい発明や技術のこと」ととらえられる場合もあるが,新しい技術を使わなくても,新しい使い方や,新しい価値が生まれこともイノベーションと定義できる。
 ここでは,イノベーションを分かりやすく議論するために,「あたらしい発明や技術のこと」を「技術イノベーション」と定義して,「人間や社会にうれしい,新しい価値を提供することを「デザインイノベーション」と定義する。このデザインイノベーションを達成するためのアプローチとして,下記の5つのアプローチを提案する。

 1) Human Centered Design Approach
 2) Prototype Driven Approach
 3) Multidisciplinary Team Approach
 4) Scenario Based Design Approach
 5) Smile Design Approach

デザインイノベーションのための5つのアプローチ
1.Human Centered Design Approach
 人間中心設計のアプローチとは,ユーザーをデザイン・プロセスの中心に据えることで,魅力的で使いやすい商品やサービスの提供をめざす手法である。デザインイノベーションの達成のためには,この人間中心設計のアプローチが基本となる。デザイン・プロセスの各段階で,ユーザー情報とユーザーからのフィードバックを収集することが特徴である。人間中心設計では,ユーザーが目にし,触れるすべてを設計する。

2.Prototype Driven Approach
 プロトタイプ・ドリブン・アプローチとは,企画やデザインの初期段階より,ユーザーに目にするもの,触れるものを簡易なプロトタイプを作り,ユーザー視点の評価を実行して進めるアプローチである。重要なことは,ユーザーシナリオに沿って,必要な人工物を原寸,立体,インタラクティブなプロトタイプを簡易に作ることと,ユーザーシナリオに沿って,ユーザー役と人工物役が,プロトタイプを活用して操作を演ずることで評価することである。

3.Multidisciplinary Team Approach
 異なる分野の専門家のチームによるアプローチは,新しいアイデアの創出と総合的なデザインに寄与する。

4.Scenario Based Design Approach
  ユーザーシナリオ手法とは,ユーザーが商品やサービスを利用する場面を想定して,できるだけ具体的にシナリオを記述することによって,デザイン上の考慮点や問題点を発見したり,あるいはそれらを解決する手段として用いる手法である。ユーザーシナリオとは,どのようなユーザーが,どのような環境で,どのような行動をとるかについて記述したストーリーである。このシナリオ手法を活用して,開発プロセスに一貫してシナリオを活用する「構造化シナリオ法」を提案する。構造化シナリオ法は,構造化されたレイヤー毎にシナリオを描くことで,「革新的なアイデアの創出」と「総合的なユーザーの満足度」を高めるためのアイデアを創出し,最終的には本当に使えるシステムやプロダクトの仕様を記述するための手法である。

5.Smile Design Approach
 ユーザーにとっての魅力を考慮したデザインをするアプローチ。ユーザーの魅力的な価値を考慮して,表現的な要素,感性的な要素,感情的な要素,物語的な要素などが重要となる。